【驚愕】宗教勧誘にガチでついていったら色々凄かった
馬鹿だったので宗教勧誘にホントについていった事がある。一人で。
何かあってもいいように使えそうな武器も持っていったのも覚えている。
いや、僕もいつもは普通に声をかけられても無視している。見た目がパッとしないから声をかけやすいと思われているのか、そういった類の人達に駅前やそこら辺で良く声をかけられることがあった。
そう思われていること自体は他人とのコミュニケーションではプラスに働くかもしれないが、残念なことに僕は宗教勧誘の人と話す必要性を生涯感じたことなどない男である。
と思っていたのだが、しかしその時僕に声をかけてきた人物は他の者とは違った。
「な、なんだこいつ……。頭、大丈夫か!?」と僕に思わせる明らかなキチガイさをその人物は内包していた。
その人物とは30歳くらいの男だったのだが、その男が最初に僕に声をかけてきた場所。まずここから意味が分からなかった。駅前のようなパターンな所では全くなかった。
ブックオフである。
ブックオフで声をかけられた。
宗教勧誘にブックオフで声をかけられた。
まじか。
と今でも思ってるくらいには衝撃的な出来事だった。
と言いつつ、僕はその男にブックオフでそのまま勧誘を受けたわけではない。漫画を読んでる時に声をかけられたのは事実だが、その場でいきなり「ちょっといいですか?祈りつづけたら絶対に成功する宗教があるのですが今から入信しませんか?」と口説かれたわけではない。
それをしたらマズイという分別くらいは、さすがにその男にもあったらしい。
第一声はこうだった。
「その漫画、おもしろいですか?」
………………。
まあ、面白いですけど……………。
と、僕は答えた。
面白いから読んでるんだけど何か文句あるのかな。興味あるんだったら、一緒に見ますか?
そう言おうと思った所で男はこう言ってきた。
「友達が漫画家で色んな漫画を資料として知りたいから俺に教えて欲しい。今じゃなくていい、後日カフェで会って話をしないか?」
う、
うーーん、頭おかしいな、、、
僕は冷静にそう思った。
同時に一周回って普通に面白くもなってきた。
とてつもない矛盾と混沌が清々しい程の潔さで僕に降りかかってきている。
まず漫画家なのは友達なのになぜこいつに教えなければならないのか。友達はいったいどこに。そもそも漫画くらい自分で読むべきでは。というかあなたは友達に漫画の知識をくれる人をブックオフで立ち読みしてる人の中から探すのですか?
もう一回言いたい。頭大丈夫か。
当然のようにそう思った僕は、目の前で怪しい日本語を放ち続ける男に向かってこう言った。
「いいですよ!話しましょう!あ、連絡先交換します?」
一番頭おかしいのは僕かもしれなかった。
そんなこんなでいくらかのやり取りをブックオフの店内で、すぐそこに人がいる状態で行い、普通に連絡先を交換し待ち合わせの日にちと時間を決め、その場は別れた。
そして後日。
学校の帰り、僕は胸の高鳴りを抑えながら何があってもいいように最低限の護身を体中とバッグに施すことで、全身武器と化し待ち合わせ場所に降臨した。
無事勧誘の男と合流し、本当にカフェに突入して話し始める。
ちなみにここからの話の展開がかなりヤバい。
もうなんかすごい。理論のこじつけがとんでもないというか、この話聞いて勧誘に乗る奴なんて存在するのだろうかと疑うレベルである。
カフェで話始めてしばらくは普通に漫画の話をしていたのだ。漫画家の友人の話だったりどのジャンルではどんな漫画が面白いのか、そんな感じだ。
話の流れが変わるのはこの後。
週刊少年ジャンプの話になった。銀魂がどうだ、リボーンがあーだと話していたのだが、そこでジャンプの雑誌キーワードである「友情、努力、勝利」の話題を向こうが出してきた。
そしてこう言ってきたのだ。
「この三要素は現実ではなかなか最後まで成功できることはないと皆思っているよね。でも僕はこれらを絶対に成功させる方法を知っているんだ」
やべえ来た。
うわわ、と思った。
なんでお前が知ってんだよ成功してたらそんな全身ユニクロみたいな服で来ないだろ舐めないでいただけますか?
そう思ったが、その時の僕はもはや勧誘男の手腕が面白すぎて別の意味で反論する気がおきていなかった。
そして男は更に続けてこう言ってきた。
「これこれこういう神がとある所に祀られているんだけど、その神に祈れば絶対に成功することができるんだよ」
ふわあああああああああああ………………。
いや数年前の事だから記憶が曖昧な所はあるけど、本当にこんな風に言ってきたのだ。
しかもかなり熱弁して。
まじでやべぇ奴や。これが宗教というやつか。普通に怖すぎる。嘘だ。何回も言ってるがもう面白い領域に突入している。いくら僕が高校生だからと言ってその理論で信じると思っているのだろうか。ヤバくないだろうか。
こんな誘い方でホントに入信する人いるのだろうか?だとしたらその人は相当な絶望を抱えていると見えるだろう。
そして面白さで爆笑の頂点に至った僕は何だかんだでガチでその神様が祀られている宗教施設に突入したのだ。勧誘男と一緒に。
僕も十分ヤバかった。
一体どこまでホイホイついていくつもりなのだろうか。頭悪すぎる、受験失敗はこの時点で確実視されたことは間違いない。
その宗教施設はかなりきれいで建物の大きさも凄かった。中に入っていくと、意外にも多くの主婦や若い男たち、果てはJKまで存在した。
もっと黒服や着物の怪しい集団かと思ったら、信者自体はどうやら普通の一般人が多いらしい。
ともあれ僕と勧誘男はその件の神様とやらがいる部屋に到着した。
畳の、十畳ほどの部屋に通されて、正座した。視線を上げ、神様を見た。
神様がいた。
金の額縁に入れられた、何語かわからない文字で書かれた紙があった。
紙だ。
紙の神だ。
これが神なのか。
なんという事だ。とてつもなく神々しい、人類如きには理解できない言語を示し続ける神代の存在。そのような、価値を決める事すらおこがましい絶対の概念。僕はその瞬間刻み込まれてしまったのだ、忠誠を。
無意識に正座をしてしまい、貰った数珠と手帳サイズのお経のようなものを受け取り、全員でお経を唱え続ける。何分経ったかは忘れたが、正座をしている足が悲鳴を上げる頃まで、お経を唱え続けた。
…………なんでこんな事してるんだろう。シュールすぎやしないだろうか。
僕は思ったが、そんな事を言い出す空気でもなかった。ひたすらに漢文みたいな文章を音読し続けるしかなかった。
そして終わった。お経が終わった。神への信仰の洗練が無事終了した。
痺れで全く力の入らない足を無理矢理動かし、正座を解く。
僕にとっての茶番が終わった所で夜も遅くなり、施設を出ることになった。
ようやく宗教小旅行は終わりを告げたのだ。
勧誘をしてきた男と外でいくらか話をし、いい経験になったとプラスに伝えたのを最後に、意外にもあっさりと僕は帰路に就くことができた。
ちなみに後で調べた結果によると、中々に巨大というか有名な宗教のようだった。
あれ以来、勧誘男との連絡はしていない。
完。
という感じで宗教勧誘に実際について言ったらどうなったか、の回想文でした。
僕の場合は馬鹿過ぎたのでついていってしまったが、皆さんは宗教勧誘を受けてもホイホイ承諾してはいけません。いないものとして無視しましょう。
二度ある事が三度あるというように、その数日後に僕はまたブックオフで別の人間に同じ手口で宗教勧誘を受けました。
そいつの体臭が、死ぬ程臭かったんです。